『ウエリントン・シタデル・バンド』東京公演

 11月21日、金管バンドの『ウエリントン・シタデル・バンド』東京公演を杉並公会堂で聴いてきた。

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イギリス式の金管バンド(本来のブラスバンド)で、サクソルン属の楽器を中心に構成されている。イギリス式のブラスバンドは7・8年前にグライムリー・コリアリー・バンドが来日したときに新潟での公演を聴いて以来だ。

ウエリントン・シタデル・バンドは名前の通りニュージーランドのバンドだ。救世軍に所属するバンドで普段は礼拝での演奏や地域や施設などへの奉仕演奏などを行っているという。創立は1883年というからかなり歴史があり、来日は1979年、1985年についで3回目。2・30年前の頃と言えば日本ではイギリス式ブラスバンドの演奏は今ほど一般的ではなかったのではないだろうか。私もレコードでは聴いていたけど、生の演奏は聴いたことがなかったと思う。

今回の来日コンサートは救世軍が主催している。救世軍というと神保町のビルや社会鍋などの慈善・奉仕活動というイメージを浮かぶけど、プロテスタントの教会組織の一つだ。ただ、組織を軍隊流に統率しており、教会を支部、信者を兵隊と呼ぶなど一般のキリスト教組織とは印象が少し異なる。

20071122citadel02_2 プログラムは前半がバッハのトッカータとフーガで始まりチャイコフスキーのスラブ行進曲で閉める。後半がラベルのボレロで始まりビゼーのファランドールで閉める。その間に賛美歌や聖歌をオリジナルとした曲やラテン曲などバラエティーに富んだ構成となっていた。ブラスバンドのレパートリーに重要なコルネットやユーフォニウムのソロ曲も忘れていない。

このバンドは(特に以前聴いたコリアリー・バンドと比べると)超絶技巧などのテクニックが秀でているというわけではないようだ。もちろん素晴らしいテクニックはあってその上であたたかなサクソルン属特有の丸いハーモニーを活かした音楽を作り上げているのだけど、テクニックを誇示するような演奏はしていない。ブラスバンドに求める魅力を前提として聴くと、それがちょっと物足りないと感じた。

楽器編成はコルネット、フリューゲルホルン、アルトホルン(テナーホルン)、バリトン、ユーフォニウム、トロンボーン、バス、パーカッションとなっている。

これらの楽器名は実は個人的には非常に懐かしい。私が中学校で初めてブラスバンド部に入ったときに「バスをやりなさい」と言われてそれから低音楽器とのつきあいが始まったのだけど、それがオーケストラでは「チューバ」と呼ばれると知ったのは少し後のことだった。「バス」というのはサクソルン属楽器の一番低音を担当するやつでB♭、「チューバ」というのはそれがフランスで発展したもので調性はCだ(正式にはフレンチチューバというのかな)。それで中学校のバンドでは、低音はバス、その上に「バリトン」、さらにその上に「アルト」と呼ばれる楽器達で編成を組んでいたのだ。現代ではそのような構成はほとんど見あたらず、それぞれ「チューバ」「ユーフォニウム」「ホルン」という楽器名で編成されているのだけれども、昔の学校のブラスバンドはその名の通りイギリスのブラスバンドの伝統的な楽器編成を色濃く残していたんだなあと、ウエリントン・シタデル・バンドの編成表を見てあらためて思ってしまった。

プログラムを見たときに曲目として楽しみだったのは「スラヴ行進曲」だ。私の学生時代の頃はチャイコフスキーのスラヴ行進曲はあこがれの曲だった。もともとブラスバンド育ちなので中学高校の頃は金管楽器が活躍する曲を好んで聴いていた。その中でアンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団のスラヴ行進曲がお気に入りで、トロンボーンとチューバがろうろうと奏でるスラヴ風テーマがあこがれだったのだ。今ではあまり演奏される機会は多くないのではないだろうか。「スラヴ」と言えばドヴォルザークやブラームスの「スラヴ舞曲」あたりがまず浮かんでくる。そんな「スラヴ行進曲」を久しぶりに聴けるのでとても楽しみだったのだ。演奏は途中結構省略していたりして物足りない感じはあったものの、久しぶりにチャイコフスキーの作り出すスラヴの雰囲気を楽しんだ。

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杉並公会堂というと、(これももう30年も前の学生時代の話だけど)、ビッグバンドでトロンボーンを吹いていたときにステージに上ったホールだ。このホール最近建て替えたらしくとてもきれいな落ち着いたホールになっていた。最近小ホールで多いシューボックス型を採用していて、両横2Fに並んだ 席とステージ後方の席が存在する。また、名前も最近は自治体が運営するホールでもカタカナ名がついたものが多いのだけど、ここはかたくなに「杉並公会堂」と名乗っていて好感が持てる。

今回の公演を予約したのは結構前なのだけど、すでに指定席は売り切れていた。それで「学生自由席」というチケットを購入したのだ。救世軍の担当の方に聴いたら「特に学生さんでなくてもご関係のある方なら結構ですよ」という。つまり子供が学生だったり、学校の先生が近親者にいたりということでもOKということなのだ。よく意味がわからないけど、選択肢はこれしかなかったので自由席を購入した。

開場の15分前に公会堂に到着したらすでに結構の人たちが自由席入場口に並んでいた。見ると学生とおぼしき人はあまり見あたらなかったなあ。入場する際に自由席の位置を確認したら1階席の後方、2階席の後方、ステージ後方の3カ所が割り当てられているようだった。そう言えばステージ後方の席って一回も座ったことがないので、いいチャンスだと思い、通路を一番奥まで行きステージ後ろの席に座った。だから上の写真はステージの後ろから客席方面を撮影した珍しいアングルになる。

この席での音はそれこそ「直に聞こえてくる」というのがぴったりの感じだった。ステージに密着していて、その上今回の楽器がアルトやバリトン、バス、ユーフォニウムなどがことごとくラッパが上を向いているのだ。おまけにコルネットやトロンボーンも客席の方を向かずに、ステージ中央方向に向かって座っているのでなおさらダイレクトに響いてきた。もちろんミックスされた音ではなかったのだけど、得難い体験だった。また、ブレスの息づかいがとても強調されていたのも、演奏を別な角度から感じるという点で面白かった。

さて、プログラムもファランドールの盛り上がりでスタンディングして拍手している人も見られるほどの盛り上がりで終わったのだが、にぎやかなアンコールの2曲の後に、なんと団員が賛美歌の合唱を始めた。ソロコルネットの奏者の方が指揮をし、全員起立して歌い出したのだ。これが素晴らしかった。女性はパーカッションに一人だけいたのでほとんどが男声による合唱と言うことになるのだけど、ハーモニーが暖かで素朴さと美しさのにじみでたコーラスだった。もしかしたら、ブラスバンドの演奏より合唱の方がよかったかも、と思うほどだった。

この団員達もみんな救世軍の信者(兵隊)で布教活動を生き甲斐にしている人たちだったんだなあとあらためて思った。終演後に会場出口で隊員達がサインに応えたりしていたが、ルカの福音書の小冊子(表示がバンドのステージ写真になっている)を配っている団員もいた。

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