大澤美穂ピアノリサイタル『春の響き』

 まだ桜が春の陽光にきらきらと咲き誇る、東京都庭園美術館の日本庭園を望むホールで行われた、大澤美穂さんのピアノリサイタル『Sonorite de Printemps -春の響き-』を聴いてきました。

 

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 大澤さんの演奏は去年の津田ホール、スタジオ・エルミタージュについで3回目です。

 

・『大澤美穂』ピアノリサイタル
http://ict-mitsuke.whitesnow.jp/brian/wp-content/uploads/2022/03/2007/11/post_1fce.html
・大澤美穂クリスマスコンサート
http://ict-mitsuke.whitesnow.jp/brian/wp-content/uploads/2022/03/2007/12/post_d8fe.html

 

 東京都庭園美術館は白金台と目黒駅の中程にある自然教育園と同じ敷地にあります。日本庭園と西洋庭園からなっていて、それぞれ芝生の広場があり、お弁当を広げてくつろいでいる人たちもたくさんいました。

 

 リサイタルは、庭園にきれいに咲いている桜を望む明るいホールの昼下がり、大澤さんのお話を交えて進みました。4月の第1土曜というこの日にホールを押さえて、それ以来ちゃんと桜が咲いてくれるのか心配の日々だったそうです。でも、この日は、全国でも早かった桜の開花から1週間たったにも関わらず、とてもきれいな花が残っていました。また風で花びらが舞い散り、花吹雪のような情景も見ることができました。

 

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 冒頭の大澤さんの言葉は

 

『音楽は言葉を超えて感情を呼び覚まさますすばらしいものだと思っていますし、そのような音楽の表現者となったことをうれしく思います。今日は桜が咲く庭園と一体になったすてきな状況で楽しめるような曲を選びました。どうぞ春の一日をお楽しみください。』

 

 というものでしたが、まったくそのような状況にふさわしい演奏を楽しむことができました。

 

 曲目は以下の通りです。

 

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・モーツアルト:ピアノソナタ 第11番 イ長調 K.331(トルコ行進曲付き)
・メンデルスゾーン:無言歌より
    甘い思い出 作品19-1
    春の歌 作品62-6
    道に迷って 作品30-4
    ヴェネツィアの舟歌 作品62-5
    デュエット 作品38-6
・ショパン:雨だれのプレリュード(24のプレリュード作品28より第15番)
      バラード 第3番 変イ長調 作品47
・リスト:愛の夢 第3番 変イ長調
     エステ荘の噴水(巡礼の年 第3年より 第4曲)
・ドビュッシー:映像 第2集
    葉ずえを渡る鐘の音
    そして月は廃寺に沈む
    金色の魚
(アンコール)
・モーツアルト:ピアノソナタ 第10番より第1楽章
・シューマン:子供の情景より「トロイメライ」
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 春の香りが漂ってくるようです。

 

 演奏を始める前にフッと屋外の桜に目を向け、思いあふれるように演奏を始めた大澤さんの演奏ですが、まったく彼女の意図したとおりに、桜の庭園を望む明るく暖かいホールで触れる数々のピアノ曲は、明るく暖かくすっと心に染みいるように響いてきました。

 

 スタジオ・エルミタージュのクリスマスコンサートの時も感じたのですが、大澤さんの紡ぎ出す音色は(ちょっと表現がおかしいかもしれないですが)骨太な暖かな丸みを持っているように思います。お話をされるときもどこかほんわかとした雰囲気ですが、それらのコラボレーションがこの庭園美術館のシチュエーションにぴったりでした。

 

 中でもメンデルスゾーンの無言歌は素敵でした。「春の歌」ももちろんよかったですが、初めて聴いた「道に迷って」は力強さにあふれていました。やさしさにあふれ暖かな大澤さんの演奏が力強さを伴ったときに、それはとても圧倒されるような表現へと変わるのが新鮮でした。

 

 アンコールで弾かれたモーツアルトの16番はおなじみの曲ですが、なんとも夢見心地のような演奏だったことでしょう。この日の状況を凝縮したような、モーツアルトのおなじみのメロディーがホール全体を包み込みました。

 

 リサイタルが終わって会場を後にし、日本庭園と西洋庭園をゆっくりと散策した後、帰路につきました。

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