「ザ・タートル」~投資家達の士官学校~ マイケル・コベル(日経BP)
リチャード・デニスが行った「訓練によってトレーダーは育つか」という実証実験の全貌を描いた本。同様の本にカーティス・フェイスの「タートル流投資の魔術」がありますが、この2冊はまったく違う切り口で書かれています。
カーティス・フェイスはタートル集団の一人として、この実験を見つめています。そして本の内容はシステムを構築するためのテクニック的な話が中心。
一方、マイケル・コベルのこの本は第三者が直接タートルメンバーや関係者にインタビューしたり、資料を調査した結果を軸に、包括的にタートルの実験を描いています。
デニスが実験を行うに至った経緯、募集広告とそれに応募した人たち、選考過程、研修、実際の運用と話は進んでいきます。タートルのトレード手法についても一章をさいて詳しく解説していますが、あくまでもタートルのメンバー一人一人がどう考え、感じ、行動したかを描いているのです。
全体的に興味深かったのですが、特に終盤にかけての章で、タートルの実験が終了してからのメンバーのその後の状況については圧巻。デニスのもとでトレードをしていたときは莫大な利益を上げていたメンバー達、自由の身になるとなかなかうまくいかなくなるんですね。その辺の話はトレードの精神論の話を聞くよりかなり身につまされます。
タートル達はデニスから資金を提供してもらって、訓練で教わった通りトレードを行い、利益は10%もらえ、損失についての責任は問われない、という夢のような待遇でトレードを行ったわけですが、その結果デニスの儲けよりもタートル達がたたき出す儲けの方が安定して大きな利益を出すようになったそうです。それどころかデニスが大きな損失を出したときもルール通りに行動していたタートル達は変わらず利益を出し続けていたということですので、エッジに沿った継続的なトレードがいかに強力かということが実証された実験ともなったんですね。
カーティス・フェイスについての言及が何カ所かに出てきますが、カーティスはコベルがこの本を出版することを声高に批判しているそうです。理由は書いてありませんが、カーティスが自分の本で書いている状況と、コベルがこの本で書いているカーティスの位置づけがかなり違っていることは確かです。その辺も比較しながら読んでみると面白いと思います。
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