『制御工学の考え方』

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「制御工学の考え方」~産業革命は「制御」から始まった~
木村英紀著(講談社ブルーバックス)

制御ということについての歴史、基本、応用事例、将来の可能性についてわかりやすく書かれています。私は機械専攻でないので詳しく勉強したことはないのですが、それでもフィードバック、フィードフォワードによる制御の基本の考え方は常識程度には知っていました。この本ではそれらをすごくわかりやすく制御の本質は何なのかということを常に考えながら説明しているので、飽きずに読み進めることが出来ました。

■機械対人間
 制御が発展すると当然作業の効率化が進み、今まで人手でやっていた作業を機械だけで行う状態が進んでいく。そんな中で製鉄所の溶鉱炉や圧延の制御だけは長い間ベテランの感性だけに頼ってきて制御の導入による自動化が進まなかったといいます。例えば溶鉱炉内の鉄鉱石の燃焼などを適正に行うには実に様々な要因がからんでいて、それをベテランの作業員は燃焼音や色、様子などで状況を把握して調整してきたそうです。それを自動化するのはあまりにも複雑すぎるそうで、今でも温度や状態などをセンサーで把握し調整室のモニターに表示するのですが、それを元に人間が調整し、完全な自動制御には至っていないということです。あらためて人間ってすごいんだなって思いました。

 よく考えてみれば、たとえばピアノを演奏するという動作を考えてみても、姿勢、腕の動き、指先の動きのひとつひとつが協調して微妙なタッチを作り上げているわけでものすごいことだと思います。その上、音楽を表現するという感性が備わって初めてピアノ演奏ができあがるわけですので、いくら制御が発達したといっても人間の動作とそっくり同じような動作を機械にやらせるということは次元が違うのかもしれません。

■トレードと制御
 悲しい性か、ついトレードに結びつけてしまいます。システムトレードも制御でなりたつといえば言えるかもしれません。まず、ファンダメンタルなどによる価格予測を行う場合はフィードフォワード制御を行うことになります。また、トレードを行った結果で手法の調整を行うこともあり、それはフィードバック制御となります。
 もちろん相場を制御できるわけではなく、あくまでもシステムとしてとらえたトレードという行為を制御するということになります。
 そういう観点で考えると、2章に書かれている制御の基本は(役に立つかどうかは別として)示唆に富む内容です。以前、トレード仲間が音響の信号制御をシステムトレードに応用できないかということを話していましたが、まさにこういうことだったんだなと納得です。

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