六十代の大学生 ~定年退職してから大学に学ぶ~

知人から一冊の本を勧められました。タイトルが『六十代の大学生』。

著者は山岸良子さんという方で、長らく県の職員として働いて、定年退職した後、新潟大学に入学されたとのこと。その4年間の出来事、思いをエッセイという形でまとめられ、出版されたのがこの本。

巻頭に娘さんの新聞投稿記事が載っていました。

素晴らしいですね。大学に進学できなかった想いを胸にしまいながら仕事と家事をこなして生きてきた。そして退職に向けて準備を進め、本当に大学に進学。それを娘さんが受け止めて応援してくれています。

4年間の大学生活を送り、さらに4年かけてこの本を執筆されたとのことですが、楽しく読ませていただきました。いくつか思ったことを書かせていただきます。

社会人入学でも内容は若者と一緒

著者の山岸さんは新潟大学の教育人間科学部に社会人入試枠で合格されました。本の中で何回も書かれていますが、社会人入試枠で合格したとはいえ、大学での扱いは普通の学生とまったく同じだそうです。そのことについて気持ちが詳細に綴られています。二十歳前の若者たちの中にポツンと60歳のおばさんが座っている。意識せずとも周囲の視線が気になる。なんとなく避けられているような気がする。履修登録も慣れないパソコンを使って四苦八苦。部活やサークルの勧誘にとまどいも感じます。

中でも「体育」に相当する授業も必須科目としてあり、若者たちの中で「ストレスだった」と感想を書かれています。ここはグッときました。私自身の話になりますが、体育が大の苦手で、社会人になったときに一番うれしかったのが「体育の授業が終わった!」ということでしたから。(余談でした)

コンパの話も面白かった。年が離れすぎている自分に若い学生たちはは「変なおばさん」などと思いやしないか、遠慮した方がいいのかも、などと気を使ったりもする。だけどコンパってどんなところか体験してみたい。学生としては参加すべきだろう。年齢は考えずに遠慮は捨てようなんでもやってみるべきだ。と揺れ動く心が描かれている。自分と同年代と思われる著者に私自身も心が揺れ動くのがわかって面白い。

アウトプットのすばらしさ

読み進めていって、著者の山岸さんのあふれんばかりの気持ちに圧倒されてきました。

卒業されてから4年間かけて書かれたとあとがきに書いてありましたが、読んでいるときは学生生活と同時進行で書かれているのかな、と思っていました。それほど自分の気持ちや状況描写が細かいのです。

きっと毎日の様子や出来事を日記につけて記録されていたのだと思います。4年間懸命に勉強したこと、記録したこと、そういうインプットの上に、これらのエッセイとしてアウトプットされていると感じました。

学びたいという心

4年間の出来事を読ませていただいているうちに、「大学生ってなんだろう」という気持ちが湧いてきました。山岸さんは大学で学びたいという強い気持ちで入学されて、「真面目に」勉学にいそしんでいられる様子がうかがえます。しかし周囲の学生たちは、できるだけ授業はさぼりたい、出席しても疲れからかほとんど居眠り、勉強は2年間だけで3年生からは就職活動がメイン、などの様子が描かれます。

そんな状況を見るにつけ、山岸さんの「学びたい」という心がまぶしく思えます。「学生たちよ。勉学に励め。」と言いたくなります。

私自身も学生時代は似たようなところがあったので強いことは言えないですが、ついそう思ってしまうほど山岸さんの勉学への気持ちが純粋で強いものに感じられました。そしてとてもうらやましい。

「生涯学習」と言われますが、この本はいい実践本として多くの人に読んでもらえたらいいなと思います。

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