「ザ・ゴール」エリヤフ・ゴールドラット著

エリヤフ・ゴールドラット著『ザ・ゴール』を読んだ。副題が「企業の究極の目的とは何か」となっていて、見た感じちょっと敷居が高いが、内容は小説であり、とても引き込まれて500ページ余りを飽きることなく読み終えた。

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著者が提唱している「制約理論(TOC)」を元に工場を再生するストーリーだが、主人公があまりにも仕事で忙しく妻との離婚の危機もからまった展開になっている。
制約理論による工場再生のストーリーは実に痛快だ。製品を納品するのに5ヶ月もかかっていて、しかも頻繁に納期遅れが発生していたという現状から、ボトルネック(制約)に注目することにより最終的には2週間で約束通り納品することができるという状態にまで改善していく。本当なのだろうか。しかし、この本により実際に業績が向上したという実例が多いとのことなので、ストーリー的な誇張はあるにせよ、この理論はとても有効なのだろう。

工場での製品製造を個々の作業のコストで評価するのではなく、全体をひとつの鎖とみて、一番弱い鎖の輪を活用することで、鎖全体のスループットを向上させるという考え方だ。これを従来の「コストワールド」から「スループットワールド」への転換と呼んでいる。

この本は製造工場を題材にしているが、著者の続編でも様々な分野への応用が示されているように、あらゆることに考え方を応用できそうだ。
一つの卑近な例として、私のピアノの練習を例に考えてみたい。

一つの曲を既定のテンポ通りに弾けるようになることを目標(ゴール)と考えた場合、一曲の中で難しい箇所があり、そこがボトルネック(制約)となる。その箇所がテンポ通り弾けなければ曲全体の完成(スループット)が台無しになってしまう。当然難しい箇所を集中して練習する。ごくごくゆっくりから初めてしだいにテンポを上げてゆく。その箇所がうまく弾けるようになると曲全体も完成度が上がり、表情付けなどもうまくいくようになっていく。
これが、ボトルネックの箇所を放っておいて、全体の練習しか行わないと、他の箇所がうまく弾けたとしてもその箇所のせいで曲全体の雰囲気が損なわれてしまう状況から抜け出せない。

そんなことを考えながら読んでみた。

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