指揮者と芸術

 NHK-BSで放送した「指揮者と芸術」を見ました。
 オーケストラ団員が往年の名指揮者を語り、それに連動して当時の貴重な演奏映像を流すという構成です。
 メンゲルベルク、チェリビダッケ、フルトベングラー、クライバー、ミュンシュ、ムラビンスキーといった顔ぶれで見応えがありました。メニューインという元楽員が語る内容がとても面白いのです。メンゲルベルクはおしゃべりだったそうです。リハーサルの時にモーツアルトやベートーベンの生涯について延々と話すのだそうです。楽員たちはもちろんそんな話は聞きたくないのだけれど。またミュンシュはリハーサルの時と本番の時がまるで違うのだそうです。幻想交響曲の断頭台への行進などではリハーサル時の倍くらいのテンポで腕を振り始めたそうです。しかし楽員たちも興奮して、演奏がおわるころにはみんなグッタリだったとか。
 チェリビダッケとフルトベングラーの対比も面白かったですね。「ティルオイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を題材に構成していましたが、チェリビダッケはいわば音楽の化身ということです。事細かに詳細に演奏を指示し、なおかつ全体の構成をまとめていく完璧主義者と。実際、その指揮する姿は音楽そのものを自分の体で表現しているようで、ティルオイレンシュピーゲルの音楽を見て楽しめるかのようでした。一方、フルトベングラーは同じ曲を指揮しているとは思えないくらい「静」のイメージです。しかしオーケストラからはさまざなな表情のティルオイレンシュピーゲルが出てきているのです。不思議です。

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