上野の国立西洋美術館で開催されているムンク展を見てきた。
ムンクはノルウェーの画家、最近マイブームの「ホルベアの時代」を作曲したグリーグと同じ。さらに二人は「エドヴァルド」という同じ名前だ。(エドヴァルドは英語だとエドワードに相当する一般的な名前) おまけにグリーグの方が約20年早く生まれただけと、ほぼ同時代を生きた二人だ。
ムンクといえば「叫び」があまりにも有名だが、私の知識としては「あの絵を描いた人か」くらいの程度で鑑賞した。
今回の展示はムンクが試みた<装飾>に沿って5つのコーナーで構成されていた。有名な「叫び」は<生命のフリース>というグループに位置している。
今回の展示には「叫び」はなかったのだが、同様な背景(フィヨルドにかかる桟橋のようなところと赤い空)を持つ「不安」「絶望」を見ることができた。これらの3つの作品はムンク自身がアトリエにフリースとして配置していて、レプリカを用いてその様子が再現されていた。
ムンクの描く人物は総じて目の周りが暗くくぼんでいることが多いのだが、明るい絵もたくさんあった。
ムンク展を見終わった後、常設展を見たのだが、そのあまりの対照的な雰囲気に興奮を覚えてしまった。常設展ではルネサンス期を中心とした絵画が展示されていたのだ。
それらの絵画はなんと緻密で光と影を効果的に使った写実的な世界なんだろう。キャンバスに近寄って見てみると気がつかなかったような背景部分にも人物が描かれていたり、樹木も肌が実物と見まがうほどに丁寧に描かれていた。また、全体的に暗い背景で構成されている絵も光をあてる部分はまぶしいほどの輝きを持っている。昔は写真がなかったので人物や風景を記録する意味合いもあったのだろうか。写真が発明された19世紀くらいからデフォルメされた絵画が台頭してきたのもあながち無関係ではないのではないか。(まったく個人的想像です)
そのデフォルメされた心象風景ともいうべきムンクの絵を100点以上も見た直後だっただけにその緻密さに感動を覚えたのかもしれない。
というわけで、ムンクを見に行ったのだけど、ルネサンス絵画に感銘をうけてしまった一日だった。
コメント
ムンクは僕も好きな画家ですよ。
近現代の人間の心理の内奥をよく捉えています。
100点以上ものムンクを一望するというのはなかなかできない体験でした。本当に心の内側をのぞき見るような世界に入り込んだような気分になってきました。