「常在戦場」火坂雅志

新潟出身の火坂雅志

久しぶりに文学作品を読んでみました。新潟出身の火坂雅志の「常在戦場」という文春文庫の一冊です。

火坂雅志は1956年生まれということなので私より1年年下といいうことになります。新潟県出身で長岡市立南中学校や新潟高校などを経て早稲田大学を卒業。今から10年前に58歳で亡くなっています。ということは私が見附中学校にいたころ長岡の南中で過ごしていたことになります。浅井先生とはつながりがあったかなあ。

火坂の代表作は何といっても「天地人」でしょう。直江兼続という上杉景勝の家臣を主人公に描かれたこの話は大河ドラマにもなりました。私は大河ドラマで初めて火坂雅志という名前を知りました。

徳川家康をとりまく名臣たちの物語

この「常在戦場」は7つの短編から構成されています。それぞれ家康を取り巻く人物にスポットを当て、人生を描いていきます。なのですべて読み終えると家康という人物が最終的に浮かび上がるという寸法になっていますね。

  • ワタリ
    「ワタリ」というと白戸三平のコミックを思い出すが、ここでいう「ワタリ」とは諸国を渡り歩いた商工業人のことを言う。
    家康の忠臣で知られる鳥居元忠は三河の「ワタリ」の家に生まれ育つ。関ケ原の戦いの直前、家康軍が到着するまで伏見城を守り壮絶な死を遂げるまでを描く。
  • 井伊の虎
    徳川軍団の中核をなした「徳川四天王」の一人、井伊直政が数奇な子供時代を経て家康のもとで活躍するが、それをサポートした井伊直虎の物語。これも大河ドラマ「おんな城主 直虎」でおなじみ。
  • 毒まんじゅう
    こちらも有名な家臣、石川数正のストーリー。このとんでもなく優秀だが、最後には家康から秀吉に寝返ってしまう数正の心のうちを、家康の正妻、瀬名に対するあこがれをからめて綴っていく。
  • 梅、一輪
    大久保忠世の嫡男、大久保忠隣(ただちか)が、梅の香りの中出あった娘を通して大倉藤十郎を重用することになる。その後の家康のもとでの盛衰の後、白梅の古木とともに隠居するまでを描く。
  • 馬上の局
    家康の愛妾である阿茶が家康のもとに来て、後に優秀な秘書のように活躍する一生を描く。
  • 川天狗
    嵯峨野の豪商、角倉了以が家康から託された朱印船貿易をきっかけに、保津川、高瀬川などの水路開拓を進めていったストーリー。
  • 常在戦場
    家康が関ケ原に向かっているとき、息子秀忠軍の下、上田城攻略に失敗する牧野忠成。その後出奔してしまうが、家康に呼ばれて「一度死んだと思えば何でもできる」と言われ再起を図る物語。忠成はその後長岡藩の初代藩主となる。長岡藩はその後「常在戦場」が藩是となる。「手柄は人生のどこにでも落ちている」というその真の意味の背景となる忠成の人生を追う。
短編集だからこその面白さ

このように家康をめぐる7人の人物の人生を辿ることになりますが、家康の人生をじっくりと追うのではなく、何度も何度も家康の人生を別な角度から眺めることになるのがとても楽しい感覚でした。なんか得した気分にもなれる一冊でした。

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