ブラスト!

半蔵門線渋谷駅を降り、109あたりを地上に出ると東急本店通りだ。オーチャードホールに行く時はこの通りの喧騒がいやだった。だが今日は通りの街灯には「ブラスト!」の旗がはためき、正面の東急百貨店には「ブラスト!」の大きな垂れ幕がいやでも気分を高揚させてくれる。そう、今日は半年も前からチケットを購入し楽しみにしていたブラストの公演があるのだ。


 東急百貨店の前に行くと人だかりができていた。誰かがブラストのポスターの前でブラストの魅力を話しているようだ。1分ほどしか聞かなかったが、今回のメンバーには日本人のパカッショニストがメンバーとして加わっていて、ステージ上でも活躍しているということだ。休憩時間のロビーでのパフォーマンスにもその石川という青年が入っているそうだ。

「なだ万茶寮」で懐石をいただいて心を落ち着かせて、オーチャードホールへ向かった。懐石に結構時間がかかったので10分前くらいに入ったのだが、まだぞくぞくと入場している。
 いよいよステージの開始だ。

  • ボレロ
     暗いステージ上に一人のドラマーが浮かび上がる。静かにボレロのリズムを刻み始める。これが日本人の石川直(なおき)だ。小柄だが精悍な顔つきだ。メロディーが管楽器によって加わってきて次第に高揚してくるとドラムのバチさばきにアクションが加わってくる。そして転調したあとのフィナーレとなる。客席からは大きな拍手が沸きあがった、が、ボレロはまだ終わっていなかった。つんざくようなリズムをバックに楽器を空中に放り投げるというパフォーマンスが待っていた。さあ、いよいよブラスト!の世界の始まりだ。
  • 照明
     次にボルゲーゼ荘の松をバックに色とりどりの旗が登場する。「ブルー、イエロー、バイオレット、レッド」とゆったりしたラップといった調子でナレーションが入る。この時は意味がわからなかったが、ステージ上で繰り広げられるパフォーマンスにはそれぞれテーマカラーが決められていて、ラストのレッドまで見事な照明を駆使して演出されているのだ。
     ブラスト!のステージは照明が素晴らしい。ステージ奥に大きく枠取りされたスペースがあり、ここにパーカッションが配置されているのだが、この枠がテーマカラーの光を発しているのだ。
  • 音響
     いわゆるステージドリルなのだが、ラッパをあっちこっちに向けてもわりと整ったバランスでサウンドがまとまっている。アンプを通した音も出しているようなのだが、いったいマイクはどこにあるのだろうか。この謎はプログラムを見てわかった。それぞれの楽器のラッパの中に超小型マイクが仕込んであるのだそうだ。それにしても見事なアンサンブルだ。いったいこの人たちはミュージックプレイヤーとしての能力とパフォーマーとしての能力のどちらが優先するのだろうか。やはりどちらも兼ね備えていないとブラストのメンバーにはなれないのだろうな。
  • バトン
     楽器のプレイヤーの他にバトンやフラッグを操るプレイヤーもたくさんいる。こちらは「いつバトンを落とすんだろう」などと心配なのだが、そんな自分が恥ずかしくなった。そんなレベルじゃないのだ。回転させながら大きく放り投げ、受け取ったときにはそれぞれの角度で静止する。ステージのはじからはじまでバトンが投げ渡される。大きなフラッグがステージを飛び交う。中にはカウベルのような音のするバトンがあって、バトン演技とカウベルのような演奏を織り交ぜてやってしまう。もちろん「落としてしまう」なんてことは有り得ない。もう私の常識を超越している。
  • パーカッション
     とにかくパーカッションが大活躍だ。
     アマチュアのブラスバンドを聴くときにひとつの目安にしているのが、「パーカッションセクションがいかに楽しくはつらつと演奏しているか」ということだ。そのようなバンドは間違いなく全体としてのアンサンブルもしっかりしている。
     ブラスト!にアマチュアバンドを引き合いに出すのはあまりにも失礼だが、ルーツがマーチングバンドにある以上、パーカッションはコアな存在だ。それをこれでもかというくらい見せ付けてくればのが「バッテリーバトル」だ。石川直氏ともう一人が一人ずつ観客に向かってウケようとアピールする。それがまたスゴイのだ、1台のドラムに対してこんなにも表現手段があるのかびっくりするくらい華麗なテクニックを披露してくれる。そのうち二人が喧嘩を始めて決闘になる。バチとバチを剣のように戦わせながら演奏をしていくのだ。
     そのうちに10名ほどのドラマーが登場して真っ暗なステージで蛍光されたバチを使って一列で演奏を始める。さらに天井から横長のフレームにセットされたシンバルなどが10人の前に下りてきて、それを使った演奏が繰り広げられる。ああ、もうどうにでもなれ!俺はこのパーカッションの洪水の中でされるがままに精神をまかせよう!!
  • インターミッション
     興奮の第一部が終わると休憩だが、みんなロビーへの急いでいる。そうだ「あれ」があるんだ。急ごう。ロビー1階へ降りるともうかなりの人数が半円形に陣取っている。

ほどなく四人の

男たちが丸いすのようなものを携えて音を打ち鳴らしながらロビーに入ってきた。これがインターミッションのパフォーマンスだ。石川氏による進行で「とっても危険でスペシャルなパフォーマンスを今日はやります」と笑いを誘っていた。エネルギッシュだ。
 いけない、トイレに行く時間がないぞ!

  • よく息がきれないね
     コルネット片手に側転をしてすぐ演奏し始める。ウェストサイド物語をテーマにしたステージでは一輪車にのってトロンボーンを吹きながらステージを所狭しと走り回る。単なるマーチングフォーメーションではなく「ダンス」をしながら演奏するのだ。見てるほうが息がきれてくる。
  • 音の王様
     すべてのステージを聞いてビジュアルには圧倒されっぱなしだったが、音の面でもさまざまな音が「blast!」していた(飛び散っていた)。しかし、私の一番印象に残っている音は「大太鼓」(Bass Drum)だ。オーチャードホール全体を揺るがすような、地の底から腹の中に響いてくるズドーンという響きは思わず身を任せてしまいそうになるほど魅惑的だ。これほど派手なステージの中にあってもその存在感は随一だ。
  • マラゲーニャ(レッド)
     さあ、色の旅は最後のレッドに到達した。エルネスト・レクォーナのマラゲーニャだ。感情はもうステージと完全に一体化していて繰り広げられる踊りや演奏は自分の精神世界そのものといった気持ちになっている。クライマックスを迎え、思わずスタンディングオベーション! ステージのメンバーはその客席を通ってロビーの方へ行進していった。そうかもう終わったのだ。
     余韻を残しつつロビーへ出たらメンバーがそこかしこに立っていて挨拶している。相棒の女性達はちゃっかりサインと握手を貰っている。カッコイイものなあ~~。

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