『マネー革命』

NHKライブラリーとして文庫版で出ている『マネー革命』1、2、3巻をを読了しました。

NHKのディレクター相田洋さんがNHKスペシャル『マネー革命』を制作した際のいわばメーキング資料となっています。元の番組は1998年の放送ということだけど残念ながら見ていません。NHKアーカイブスなどで探してみたのですがどうも公開されていないようです。

各巻のタイトルと話題は以下の通りです。

  1. 巨大ヘッジファンドの攻防
    この番組を制作するに至った経緯から始まり、金融市場に広がるコンピューター、巨大ヘッジファンド、巨大損失を出した天才トレーダーなど現代の金融市場を取り巻く特徴的な状況についての話題です。
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  2. 金融工学の旗手たち
    金融デリバティブに関わる人物に焦点をあてています。大阪で始まった世界で最初の先物取引、現代の先物取引のメッカ、シカゴ、ポートフォリオ理論の確立、オプション理論の確立、MITに集結した金融工学の旗手、ブラック、ショールズ、マートンの御三家
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  3. リスクが地球を駆けめぐる
    デリバティブに起因する巨額損失に焦点をあてて、金融リスクについての実態を描いています。LTCM、大和銀行、英ベアリングズ銀行、ブラックマンデーなどの出来事を当時の当事者などからの証言をもとに再現。
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とても読み応えがあります。実に様々な著名な人物のインタビューが出てくるので、デリバティブを取り巻く状況についての認識が深まると思います。ショールズやマートンの長いインタビューなどもあるので、ブラック・ショールズ式の生い立ちなどもわかります。式そのものを理解できるわけではないのですが、一般向けにかみくだいてたとえなどで解説しています。中でもギリシャ時代のオプションの発生についてのアニメはおもしろいですね。

また、様々な損失の話が出てくるのですが、いずれの破綻もポジションの取りすぎが一番の原因であることがとても興味深い。LTCMの破綻もビクター・ニーダーフォッファーの破綻も「まさかこんなことが」というような出来事が大きなポジションに襲いかかった結果なのですね。これは強く自壊しなければと思いました。

それにしても実にいろいろな人のインタビューを集めたものだと思います。金融の専門家ではない制作者たちがこれだけの内容を番組にして作り上げるということはすごいことだと感心しました。逆に言えば、デリバティブについて初めての人でも、その考え方やリスクなどをわかりやすく学ぶことができる教材として本書は使えるのかなとも思いました。(エピソードや情緒的な話ももちろん多いのですが、根幹は外していないと思います)

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