田部京子さんの『ホルベアの時代から』

先日、NHK-BSの「ぴあのピア」でグリーグの曲をやっていた。

3日間やったのだが、1日目はおなじみのペールギュント組曲のピアノ編曲版、2日目はホルベアの時代、3日目は叙情小曲集という内容だった。ここでピアノを弾いていたのが田部京子さんだった。(グリーグの後シベリウスのシリーズも田部さんが弾いていた)

このときの田部さんの演奏があまりにも鮮烈だった。特に2日目の「ホルベアの時代から」だ。この曲は通常は「ホルベルク組曲」という名前で弦楽合奏として演奏されることが多いけどグリーグ自身によるピアノソロ版は初めて聴いた。

普段はマリナーのアカデミー室内管弦楽団のCDでよく聴いていた。特に1曲目のプレリュードははつらつとしていて聴くたびに元気になるお気に入りだ。

テレビでの田部さんの演奏はガヴォットとリゴードンの2曲だったのだが、これがまた鮮烈だった。グリーグの叙情的なメロディーの合間に入るアクセントとなるフレーズが歯切れの良い低音で曲を引き立てる。あぁ、自分の文章表現力のなさがなさけない。とにかく言葉に表せないほどすてきな演奏だったのだ。

これは全曲聴かねば、ということでその晩の内にAmazonに注文してしまった。

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このCDは「ホルベアの時代から~グリーグ・リサイタル」と題されていて、「ペールギュント」から有名な4曲、「ホルベアの時代から」の5曲、「叙情小曲集」から8曲、自作の歌曲を編曲した「君を愛す」で構成されている。

この中で「ホルベアの時代から」のプレリュードはピアノでどのように弾かれるのだろうと言うことが一番聴きたかった。弦楽合奏でいつも歯切れの良いはつらつとした演奏を聴いていたので、はたしてピアノであれが表現できるのだろうかというのが気になっていたのだ。

聴いてみた。打ちのめされてしまった。弦楽合奏とは違うがみごとにピアノに合わせてアレンジされていて、それをまた田部さんのピアノはスマートに弾ききっていた。圧倒的だった。

女性の優しさだけでなく、力強さ、透明さを併せ持ったピアニストだと思う。今年、及川浩治に出会ったのと同じくらい強烈な出会いだった。

コメント

  1. 尾崎元昭 より:

    グリーグは長い曲よりも短い曲にいい作品が多いですね。
    そういった曲は「詩」が結晶化したような美しさがあります。

  2. ブライアン より:

    そうですね、このCDでも叙情小曲集はみんな初めて聴く曲ばかりですが、聴くたびにやんわりと気持ちの中に浸透してきます。

  3. 尾崎元昭 より:

    ですから、グリーグのピアノ協奏曲を悪く批評する人たちは、もっと彼の小品を聴くべきです。