『日本語の作文技術』本多勝一著

『日本語の作文技術』本多勝一著(朝日文庫)

20091208_nihongo01

 「作文」っていう言葉、久しく聴いていないような気がします。子供の頃は国語の時間に作文を書いたり、修学旅行を作文にしたり、夏休みの宿題で読書感想文を作文したり、ずいぶんと「作文」しました。ひるがえって大人になってからはいわゆる「作文」という行為はあまりしてないような気がするんです。

 ですが、例えば仕事で企画書を書いたり、議事録を書いたり、プライベートでもブログやmixiの日記、メールなど、「作文」を「文章を書く」という言葉に置き換えると私たちの生活に欠かすことができない行為です。

 文章を書くということは、それが(自分であれ他人であれ)人に読まれることを想定して書くはずです。それならばわかりやすい文章を書いて、気持ちよく読んでもらい、自分の伝えたいことを正確に理解してもらいたいですね。

 わかりやすい文章を書くには文法の知識はさほど必要ではなく、「わかりやすく書きたい」という気持ちと、それをサポートする少しの知識・技術があればいい、というのがこの本がいっていることです。そして例を豊富に使いながらその知識・技術・心構えを解説しています。

 この本の前半でかなりの量をさいているのが修飾文の扱い方です。わかりにくい文章を見てみると修飾の関係があいまいなことが原因の場合がほとんどということ。したがって、修飾の順番を適切に並べ替えるだけで見違えるほどわかりやすい文章になると言っています。いくつか考え方が説明されているのですが、その中で一つだけ覚えておくとしたら次の原則です。

【長い修飾語は前に、短い修飾語は後ろに】

これを適用するだけで他の原則もほとんど含まれてしまうほど効果が大きい考え方です。

 それともう一つ面白かった話としては「自分が笑ってはダメ」ということ。落語を見てもわかるように、おかしい話をするときに落語家自身がおかしがっては聞いている方はうんざりします。落語はあくまでもまじめに状況を再現するだけ。文章も同じで伝える方がおかしがっておもしろおかしく大げさに表現してしまうと読んでいる方はしらけてしまうんです。あくまでも物事を正確に的確にわかりやすく伝えるのが原則。そうすればその内容によっておかしかったり、悲しかったり、怒ったりするんです。

 こう書いているこの文章はまったくなっていないのですが、わかりやすい文章を書きたい人は前半だけでも読んでみるとハッとすることがたくさん書いてあって得るものが大きい。そんな人におすすめです。

コメント